夏服


衣替えの季節。




痩せ型でなかったっけ。


――過去形?


いや、太ったって意味ではなくて、体格が良いというか。


はぁ?


胸板が宇多田的というか。あー3年前の宇多田。


(脛を蹴られる)


二の腕が――


二の腕禁句。




最近、さ。


なに。


夏の制服姿の女子中高生を見かけると、必ず眼が追っている。顔も体型もない、制服が目に入った瞬間に視線が追跡してる。視界に入ると、つい見る。目ぇ、悪いし、一瞬のこと。思うところがあるでもなし、条件反射的なものなんだが。胸を衝かれているのかもね、少しばかり。


俺もすっかりオッサンの脳味噌になったな、と思って。制服さえ着ていれば、女子の夏姿に条件反射する。10年は前だけれど――昔は、自分も対等の関係のもと誘って、やってもいたのにね。いまでは女子高生という記号にのみ目を奪われて。脳内オヤジ化が完了したらしい。


即。きもい。10歳は下って、ろりこんじゃない。


それは相手の年齢が一桁とかそういうのを言う、と応じかけて先方が、ペドファイル、という単語を知らないことに思い至り自粛。つか、あなたがいうかね。




つかまるよなことはや・め・て。こっちにまでケーサツ着たらメイワクだから。


知ってるでしょ。


あ、相変わらず。


ま、元気はないし、性癖は直らん、よって、弁証法的には、元気がないのはよいことではないのか。止揚されて。


つか、引きずってる、まだ。


直接にはわかり合えない、何を言っているかもお互いわかってなかった。わかる気もなかった。話を聞かない者同士でサ。子供の恋は身勝手で。


いいんじゃない、変態は変態で、私はごめんだけれど。


軽く変態認定する人なので、ラクだ。体格も胸板も二の腕も、むろん冗談。痩せている女は好きで、だから少しは太ってくれないと困るし、性の不一致は大いに困る。痛し痒しの饅頭コワイ。齢の稚いことも困る。




手ぇ出さないほうがいいよ。都の条例。


自由恋愛だから。


恋愛キライでしょ?


コレが恋愛、欲望と友情の乖離した男にとっては。『レベルE』の、コンウェル星人の気分。これまでもそうしてきたし、死ぬまでのこったろう。恋が世界との契約でなく、他者との契約でもなく、自己との契約でしかない人は、難儀だ。そのくせときおり無性に肉体を欲する、勃ちもしないのに。


口に出さず笑って。いや、だから、夏服に恋してる、女子高生の制服に。虚な気分で。


むろん、何を言っているかもお互いわからない、話を聞かない者同士だから、ハァ、と恒例の要領を得ない表情を浮かべて、先方は寝具に伸びる。脱ぎ放たれた制服。


初夏の頃の一幕。