ヤンデレじゃないよヤンヤンだよ

http://d.hatena.ne.jp/kinghuradance/20070427

なんの調査もしないで印象論で書くけど、メンヘルという言葉には、性的なニュアンスがある。圧倒的に、女性に対して使われる言葉である。「精神疾患的な女性の振る舞いに、勝手に性的なファンタジーを押し付けて、レッテルを貼って面白がるなんて！」と、男たち（非モテ？）を、非難したくなる。しかし、裏返して、次のようにも考えられる。「メンヘラ」によって童貞ヘタレ文化系マインドが刺激されるというよりも、まさに男たちの性的な視線によって、「メンヘラ」が生成されるのではないのか？

私も何のデータも参照しないで脊髄反射で書くと、別にメンヘラは女子のみの専売特許というわけではないだろうし、純粋に「何らかの精神疾患を煩っている人」ということであれば、女子よりも男性の方が周りには多かったような気がするし、という思いがあります。

元メンヘラにして、過去にメンヘラ女子やメンヘラ妙齢と嵐が丘のごとき劇薬恋愛していたヒースクリフの私が調査もデータも知ったことかと即席で放言すると、先ず、kinghuradanceさんのエントリに示された見解に全面的に同意です。以下、kinghuradanceさんに対してということではまったくなく、あくまで一般論として。

ヤンデレという新ジャンルについて耳に入れたときには、書きたくもないけれども放言するとしたので記しておくとフィクションにおけるキャラクターとしての「障碍者＝片輪」に性的にやられる人も多くあるところであるし、肉体から精神へと移行したということ、順当な帰結とは思った。消費者が全部わかって消費している以上、突っ込んだり目くじら立てるのも無粋だ。文字通り「片輪」であることに脳内プレイにおける意味と意義の在る限りは。

橋本治はかつて有害コミック騒動の際に「有害コミック」を擁護して言った、こんな女が現実に存在するわけがない、こんな女が現実にいるなんて誰も思っていない、そんなことは皆わかっていてそのうえで作家が技術を傾けて創造した女を楽しんでいる、約束事について作家と読者双方が了解したうえにてその御約束を楽しむフィクションをエンターテインメントというのだ――と。

私とて嗜好著しく偏っているしフィクションにその代替を求めることのある。というより、嗜好上求めるよりほかない。人間とはすべからく（断るのも面倒だけれども知って用いている）性的存在とも思っている。岸田秀というよりは、こう言ってよいなら私はフロイディアンであるから。

であるから。私は橋本治の見解を採る。脳内プレイの対象に対して、こんな女は現実にはいません、とか鬼首で言っても仕方がない。

NHKにようこそ!

たとえば↑。とても素敵な、切実な小説ではあるけれども、それゆえにこそ、誰も真に受けているわけではあるまい。岬ちゃんとか先輩とか。彼女達の切実に作家が魂入れそれを読者が受け取ったとしても。

あ、でも1点だけマジレスしておくと。デレありませんから、ヤンのみっす。ヤンヤンです。終始ガチっす。笑いどころないくらいにシビアです。あーガチで嵐が丘ですよ。それも「共依存」というおっそろしく心遣いのない単語によって矮小に形容されるにふさわしい、凡庸なヒースクリフとキャサリンの腐れ縁。

↑の佐藤君と岬ちゃんも言ってみればそんな関係であったし、そんな関係のまま緩やかに続いて終わっていったのだろうけれども（※マンガ版は基本的に未読）。己の過去の無残な恋を公然において真顔で多言するは馬鹿と自ら規制しているので、多くは語らず。ただ、アルファ氏が今朝方発された本日の至言の通り、未練とは自惚れですよん。ではっ。

そして。kinghuradanceさんのエントリに戻って。

過去にメンヘラだった自分の意見としては、「メンヘラの女子に関わると大変なことになるぞ」としか思えないのですが、どうも世の中にはわざわざ炎の中に飛び込んだり、いばらの道を歩いたりしたいと思うような男の方もいるのか。というような、不思議な気分になるのです。

「エヴァ」の綾波レイのように、身体のあちこちに包帯を巻いていたり、眼帯をしていたりする女子に萌えるという人もいるのだから、「心に傷を負っている」アピールをする女子に萌えるという人がいてもおかしくは無いことだけれども、「メンヘラ」というものはそういう物ではないだろうし、実際そういう観点でメンヘラ女子に関わるとろくな事にはならないと思ってしまうのです。

まったく同感です。そう私も思うところなのですけれども。炎の中で茨の道でろくなことにはなりません。惚れた側としても、あるいは別なる人から求められた側として自ら省みても。――「メンヘラに幻想を持ってはいけない」。「痛い人間」であった、私も。世に「思い出すだけでも頭痛がすること」の種は尽きまじ。