ドリャーおじさん の検索結果 約 14 件中 1 - 7 件目 (0.26 秒)



先日友人に指摘されて気が付いたのだが、私は任意のエピソードを話す際に「これは有名な話だけれども」と枕詞を付けてしまうらしい。それも地の果てな話柄の開巻に。「あの有名な東尋坊のドリャーおじさんが」ってどこで有名なんだよ。説明いるだろ。


ホラ、あの『探偵!ナイトスクープ』の伝説のVTR。褌一丁で東尋坊の断崖絶壁から1日100回、ドリャーっていう咆哮と共に海に飛び込む行を20年間日課にしてる有名なおじさん。あまりのことに引きまくってるレポーターが「何のためにこんなことやってるんですか」っておそるおそるマイク向けて訊くと、身投げ100回の日課を終えて全身から水滴らせた筋骨隆々のおじさん最高の笑顔を浮かべつつ「うーん、男のロマンですね」超格好良い。昔、大竹伸朗が講演やシンポジウムに呼ばれるたび、いかに格調高き美術館や大学だろうとプロジェクター使って大画面で録画ダビングVTRを流したあげく「俺の最も尊敬するアーティスト」って最敬礼で紹介してた、あのおじさん――って誰が知ってるんだよそんなの。脈絡も細部もわかんねえよ。反省。


谷崎の『蓼食う蟲』ではないが(あの作品の最後に残る主題は「自分が一番可愛い人間が他人を愛するとはどういうことか」だろう――余談)、己の身が海に沈もうとも自己解剖をやめようとしない、蛙の背に乗る蠍のごとき性で我が自意識を厭々分析してみれば、マイナーな話柄を殊更強調する自分(=マイナーな話柄に通牒してる俺)と他人に見られたくなくて「誰でも知っているような有名な話ですからこれ」と、無意識に露払いの防衛線を張っていたのだろうね、というイタい解が導かれる。逆方向に殊更強調しすぎ。有名な話ではないだろ、常識的に考えて……


Youtubeの存在を知ったとき、実は真っ先に探したのが件の「ドリャーおじさん」VTRだった。結果は言うまでもなし。大竹さん、アップしてくれないかな、ってそりゃ無体だ。自力で探せゴルァ、とあの人なら一喝するに決まっているのだった。