Yes Sir!


『【映画】キューブリック、“ハートマン軍曹”アーメイに「アイズ・ワイド・シャットはクソ」と告白』


上は2chの過去ログのスレタイより。簡潔に要を得ているので拝借させていただきました。2週間ほど前のYahoo!の該当記事。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061010-00000012-eiga-ent

R・リー・アーメイは87年のキューブリック監督作「フルメタル・ジャケット」で海兵隊の教官役として俳優デビューを飾り、それ以来キューブリックとは親交があったという。アーメイは今月に全米公開となる自身の出演作「テキサス・チェーンソー/ビギニング」の取材で、キューブリックのことを聞かれ「スタンリーが亡くなる2週間前に電話があったんだ。『アイズ・ワイド・シャット』について2時間くらい話したんだけど、彼は“今回の映画はクソだ”と言い、(略)彼はシャイで臆病な小心者で、本当に強い人間じゃないんだよ。(後略)

何度も何度も噛み噛みしたい、地中海スルメのような味わい深い記事。以下、妄想の翼は羽ばたく。
何、リー・アーメイ閣下を知らない?


貴様!口でクソたれる前と後に「サー」と言え!分かったかウジ虫!


http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%83%A1%E3%82%A4

筋金入りの軍曹が筋金入りすぎの軍曹役で映画史に名を刻んだ、と。しかし。

キューブリック監督は彼を「これまで仕事をしてきた中で最高の俳優の一人で、1シーン撮るのにたった2.3回のテイクで十分だった」と評している。

あら?私が急逝直後に某誌で読んだ話だと、アーメイ閣下はかの神認定の鬼教官降臨長回しシーンをン百回とリテイク出されて地獄を見せる役回りがキャメラの向こうの鬼畜元帥に地獄見せられた、と。ま、キューブリック伝説は錯綜していて信頼できる評伝っていまだにないからな……まして死の直後なら伝説の在庫総ざらえの時期だ。遺族監修のドキュメンタリーとプライベート写真集は後に発表されたけれども。


とまれ、以下、上記記事から読み取れるアーメイ&キューブリックファンにはたまらん心の流星は、大きく分けて3点。


1.アーメイ閣下の新作『テキサス・チェーンソー/ビギニング』全米公開(笑)。

ゴールデングローブ賞にもノミネートされた名優たる閣下の本筋の仕事はこちらにあります。しかしその絢爛たるフィルモグラフィーを見渡すと『セブン』に『リービング・ラスベガス』に『デッドマン・ウォーキング』に『告発』……?どこに出ていたか全然思い出せない私は看板下ろすべきでした。そんな主演最新作『テキサス・チェーンソー/ビギニング』のプロモ取材で、かのスピルバーグドーヴァー海峡飛び越え英国まで呼びつけられる世界唯一の男(大統領でも無理だろう)キューブリックとさらにトム&ニコールに関する第一級の爆弾発言を、何物も恐れることなくナチュラルにぶっちゃけてしまうとは。さすがキンタマの太い軍曹殿であります。サー!


2.電話口で4文字言葉を連発キューブリック(笑)。

キューブリックは医者の息子とはいえ、生粋のブロンクス育ちで、エスタブリッシュな社会との交際も逃げまくっていたため、つまりそういう人です。M・スコセッシの還暦過ぎても変わらない、あのクレイジーな早口を想起してください。しかし70にもなって電話口で2時間に渡りアーメイにFuckだのShitだのBitchだのと延々ブロンクス仕込みの、当人に面と向かっては絶対言えないDisとHateを一方的にまくし立てている(に決まっている)キューブリック巨匠というのは、素晴らしい。しかもそれが結果的にアーメイへの遺言となってしまい、自分の死後10年近く経って、当の友のテキサス的な人徳によって大らかかつフランクに愛を込めてバラされる始末。貴方はそう来なくては。なお最後の5文字は誰への枕詞か言うまでもなし。そんな厨房のようなキューブリックを慈父のごとく受け止めてやり相槌を打ち続ける無骨なリアル軍曹。美しい光景だ。どれだけ友達いないんだよキューブリック。そう、だから本物件最大の感動ポイントとは。


3.死ぬまでマブダチだったアーメイとキューブリック(笑)。

A.I.』の原作者B・オールディスが「キューブリックと仕事してえらい目にあったの巻」というエッセイを書いていて滅法面白い。概してキューブリックと仕事で付き合った世界有数のインテリ連中はみな「えらい目にあったの巻」の証言を残している。手塚治虫も『2001年』に参加していれば「えらい目の巻」勧進帳に名を連ねていただろう。だからなのかな。専門的な知的訓練を一切受けなかった不良上がりの海兵隊軍曹、真鍮の合金男に対してだけ、彼は胸襟を開いて愚痴れたのだろうか。仕事の内幕暴露的な悪態を2時間もぶちまけられる相手は、身内以外ではアーメイのような自分と正反対の心臓頑健な鉄人しかいなかったのか――つまりプロジェクトの一切に無関係かつ無関心な。あぁ妄想の翼がおセンチになっていますね。とはいえ、

彼はシャイで臆病な小心者で、本当に強い人間じゃないんだよ。

と、世界の財産ともされたひとりの友を語るリー・アーメイの言葉は泣ける。

それで、彼の映画もダメになったと言うわけだ

もっと泣ける。直截すぎ。これもまた、親友の証か。


余談だが、キューブリック作品をマンガ化するなら各作品それぞれ誰に作画させるか、ということをつらつら考えていたことがあり、その際真っ先に確定した物件が2件だけあって

アイズ・ワイド・シャット』=叶精作先生
フルメタル・ジャケット』=漫☆画太郎先生

というチョイスだけは、誰にも譲れないガチ真芯のFAなのでした。脳裏に描きましょう。さあ!あのデュビュッフェも真っ青のアールブルトな殴り書きでのどちんこが迫ってくるような見開きドアップで!


パパとママの愛情が足りなかったのか、貴様?


(直後に射殺)