「アドバイス」にはたぶんならないけれど。


「毒が回る」ということ - 地を這う難破船

はてなブックマーク - 「毒が回る」ということ - 地を這う難破船


ブックマークコメントを拝見して読み返した。些か反省した。もっと簡易に説明してみます。(追記。簡易にならなかったようなorz)というのも。


ブクマコメについて - Apeman’s diary


こちらのコメント欄と、


急募:アドバイス(追記あり) - Apeman’s diary


こちらを拝見したので。イスラエルのガザ侵攻については『面倒くさい話なので言及したくない派』の私ですが、少しaksumiさんが言われるところの「争っている」「互い」の落としどころを探ってみます。以下、特に断りなき場合引用はブックマークコメントから。

id:Lhankor_Mhy  政治 つまり、イスラエルがジェノサイドしようとしていたのなら白燐弾焼夷弾で、そうでないのならば煙幕弾だろう、という論でいいのかな? 2009/01/25


違います。煙幕弾を焼夷弾としてイスラエルは使用したのではないか、という告発が現地の被害報告と共に存在する、ということです。イスラエルは否定していますが。が、というのは。


乱暴かつ簡易に言えば、国際法とは戦争のルールです。戦争行為に際する残虐行為の排除をルールは含みます。ルールなき戦争は虐殺の別名であったからです。そもそも戦争が残虐である、というのは記した通り却下さるべき議論です。そして、現在のパレスチナを国家として認めないイスラエルは今回のガザ侵攻において無茶苦茶放題。停戦に際して「イスラエルが一方的に停戦を宣言」という表現を私はキー局の報道で幾度も耳にしました。停戦合意も糞もないということです。


イスラエルは今回のガザ侵攻において国際法の無視に躊躇がない。「国際法の無視に躊躇がない」ことが問題であり、そのことを批判する見解においては「国際法の無視」を白燐弾使用についても問うている。だから。

私は「どういう仕方で使われたか」以前の「白燐弾を使った=違法」とする主張にたいして話をしていて、それは明確に切り離せるのですが。

ブクマコメについて - Apeman’s diary


この見解については「明確に切り離せ」ません、と答えることになります。少なくとも「白燐弾を使った=違法」とイスラエルのガザ侵攻について主張する側においては。既に指摘されていますが「イスラエルのガザ侵攻」の話をしているのではない、というのは無理です。「白燐弾を使った=違法」という主張は一般論ではありません。


それを一般論と考えるのは、いつどこで誰が何に対して白燐弾を使おうと「白燐弾を使った=違法」と批判する主張が存在する、という、すなわち「白燐弾使用それ自体が違法」と一般論として主張する議論の存在を前提する藁人形です。はっきりと言ってしまえば、一般論として兵器使用全般を目の敵にする「好戦的な平和主義者」を主張の背後に想定する議論です。


ところで、この話はイスラエルのガザ侵攻の話ですよね。国際法の無視は戦争行為に際する残虐行為として現れます。残虐行為を無問題とする国家意思が問題であり、そのことを考えるときイスラエル国家の成立経緯を措くことは難しい、という話です。


白燐弾使用について、ではありませんが、有村さんだったか「戦争ではよくあること」というブックマークコメントを記しておられた。皮肉の意図はわかるけど、マジレスすると「よくあること」で済んだら国連も国際司法裁判所も要りません。要らない、というのが自力救済をモットーとしその本音を剥き出しにするイスラエルです。「お気持ちはわかります」とかもちろん言えません。言えないから私たちは頭を悩ませる。「イスラエルがかわいそう」と増田で書いていた人がいましたが、ヘタリア的に擬人化するなら、ツンデレならぬツンツンのイスラエルはたぶん「大きなお世話」と言います。

id:NOV1975 政治  僕も若干ごっちゃになり気味に書いてるけど、白燐弾は定義上の非人道兵器か、という点がそもそもの話で、それ自体はほとんど意味のない議論ではある。


率直に言って、NOV1975さんのエントリは趣旨において「イスラエル憎けりゃ白燐弾まで憎い」という発想を批判するもの、と私は読んだし、あるいは「戦争憎けりゃ白燐弾まで憎い」という発想を批判するエントリ、とも読みました。誤解、と思ったので『面倒くさい話なので言及したくない派』の私もエントリを書きました。「白燐弾が憎い」という話ではないし「イスラエル憎い」という簡単な話でもないですよ。

id:xiao_bancho  ガザ侵攻を批判したいなら白燐弾に言及するのをやめるべき。個々の兵器の機能について軍ヲタと勝負して勝てるわきゃない。俺軍ヲタだけど(笑)「米大統領就任するから撤退するね☆」は茶番にしか聞こえなかったし。 2009/01/24


「言論」というのは「勝負」の対立概念と私は思っています。いや人生勝負所はありますが「言論」で「勝負」することはないと私は思っています。「白燐の性質と人体有害性と白燐弾の設計思想と人体有害性」について議論することと「白燐弾使用の実態ならびに被害と白燐弾使用の国際法に基づく違法性の有無」について「イスラエルのガザ侵攻」という条件において議論することは違うし、また両立することと私は思います。「軍ヲタ」であることとガザ侵攻に対して批判的であることが両立するように。また、私がそうですが「平和主義者」ではまるでないこととガザ侵攻に対して批判的であることが両立するように。


国際法の議論は「白燐の性質と人体有害性と白燐弾の設計思想と人体有害性」と別個に議論しうることと私は思います。そして「国際法違反」の主語は第一義的に「イスラエル」に掛かるものであって「白燐弾」に直接掛かる、ということでは必ずしもありません。


「軍ヲタ」的に言うなら、少なくともガザ侵攻において報告される被害は白燐弾の問題ではなく第一義的にイスラエルの問題です。ヴェトナム戦争における枯葉剤の散布はアメリカの問題であって枯葉剤それ自体の問題ではありません。核抑止力と原爆投下は別の問題です。言い換えるなら。白燐弾国際法の理念に鑑みてNGに妥当しうる使用を行った、と現地の被害報告において告発されているイスラエルの問題です。――少なくとも私は、それらの見解に同意します。


同意のうえで、しかし「平和主義者」には別のコンテクストが存在する――そのことが「白燐弾」をめぐって相違するコンテクストの衝突を引き起こしている――ということを伝えたく思います。優劣の問題ではありません。

id:wiseler  ……。"「イスラエルのガザ侵攻における白燐弾使用を「非人道的兵器の使用」として問う見解」を国際法の文面解釈に即して「デマ」"なんていっている人はいないわけですが。/表現に表れる思想の問題。


よかった、「イスラエルのガザ侵攻における白燐弾使用を「非人道的兵器の使用」として問う見解」を国際法の文面解釈に即して「デマ」なんていっている人はいなかったんだ。というのは茶化しているのではなくて真面目に思います。端から論点が違う、という主張ですよね。


私が考えるのはこういうことです。ところでwiselerさんにお尋ねしたいのですが、自衛隊違憲ですか合憲ですか。あるいはそのイラク「派遣」は。wiselerさん個人の判断は「明確に切り離」して。


文面に即する限り存在自体が違憲です。違憲なら法的に自衛隊ハマス軍事部門並みの存在、ということです。空幕長騒動に対する国内の反応を鑑みるにそうではないようです。憲法を論じるとは終始文面に即すること、ではありません。法律は建前であって仏を作ったら魂を入れなければならない。それは、憲法に戦力を保持しないと明記してあるから自衛隊はなくすべき、というような話ではありません。


問題はこのように問われます。自衛隊が存在しそのことを国民が事実上承認している現在の状況において、憲法の文面をどのように取り扱うか。政府自民党による度重なる解釈改憲はその認識に基づいて行われていることです。そのことに対する掣肘として改憲論を問うていたのはたとえば宮台真司でした。


この問いは、白燐弾をめぐる国際法問題において、次のように変奏されます。イスラエル白燐弾使用による非戦闘員被害がガザに存在すると報じられているとき、国際法の文面をどのように取り扱うか。つまり、そのとき問われるのは、憲法にせよ国際法にせよ、立法の精神と守られるべき法益です。だから、護憲の立場において自衛隊違憲とする言説は支持を得られなくなりました。


「「どういう仕方で使われたか」以前の「白燐弾を使った=違法」とする主張」が問題であるなら「どのように国民がその存在を承認しているか」以前の「自衛隊=合憲」とする主張も問題たりえます。むろん「自衛隊=合憲」とする主張はその前提条件を含意するがゆえに、私は「自衛隊=合憲」とする主張に、あるいはその言明に、問題あるとは考えません。つまり、任意の法をめぐる議論において政治的/社会的/歴史的なコンテクストは「明確に切り離せ」ません。切り離すなら簡単で、自衛隊違憲です。「でっていう」。


繰り返しますが、「自衛隊違憲」ということは、法的に自衛隊ハマス軍事部門並みの存在である、ということです。「自衛隊違憲」という公的な言明が、それ以外の何物をも意味しないはずがない。まして、イスラエルの高官が公的に言明する「白燐弾使用は非合法ではない。」という「法的定義」が。高度に発達した「法的定義」の説明はポジショントークと見分けがつかない。中国共産党政府はチベット問題について「内政干渉」と対外的に言いました。


法について言語ゲーム的な観点から論じることは法益を問うときまったく無益です。弁護士の無料法律相談ではあるまいし、とはそのこと。いや私も無料ではないけれど相談することはある。これは法に触れるか。刑法第○○条に該当します。あるいは、非合法ではありません、と。比喩ですが、イスラエルアメリカと国際社会の建前に相談した結果「非合法ではない」との回答を得た模様で、それでごらんの有様です。


その「ごらんの有様」がガセネタなら別ですが、少なくとも現在現地の被害は報じられています。「白燐弾使用」の被害として。「イスラエルのガザ侵攻における白燐弾使用」と但し書きすべき、という話なら了解します。また「非人道的兵器の使用」でなく「「非合法ではない」兵器の非人道的使用」というコンテクストの正誤についても了解します――それを「正誤」の問題とあまり思えないのは私にミリオタ属性がないからか。そして、「イスラエルの非人道的行為」について合意しうるなら、少なくとも「互い」に「争う」要はないと、私もまた思います。